活気溢れるフィリピンの小売市場では、既に多くの日本企業が成功を収めている。競合の多い業界で彼らはいかにして現地の消費者の心を掴んだのか。そして、市場進出先としてフィリピンが選ばれる理由とはなにか。
アダストリアの市場進出事例
アダストリアは多くのブランドを展開するアパレル小売企業だ。2024年、フィリピンのSMモールにニコアンドのフラッグシップストアをオープンした。実店舗とオンラインのサービスをかけ合わせた戦略で顧客の心を掴んでいる。また持続可能性を重視し、環境に優しい素材の使用や廃棄物削減にも取り組む。
同社はフィリピン進出を重要な転機と捉えている。戦略的な立地がもたらすメリットと、若年層や中間所得層の増加が期待できるからだ。参入に際し同社は現地企業との合弁会社を設立した。これにより市場の詳しい知識を入手できるようになった。
今後、ニコアンドの店舗数拡大やグローバルワークスなど新たなブランドの展開、製品の現地生産などを検討している。
ニトリの市場進出事例
家具などを販売するニトリは、お手頃な価格を売りにして人気を集めている。オンライン販売も好調だ。中国などから製品を調達し生産コストを抑えるなど工夫している。
同社は既にマレーシアなどでも成功しており、満を持してフィリピン市場に進出した。三越BGCに一号店をオープンし、最大14000点ある製品の中からフィリピンの消費者向けに厳選した4500点のみを販売する。
現地の人々のニーズを反映させた製品を提供することで、売上や固定客を増やす狙いだ。同国での売上目標を大幅に達成したニトリは、今後も店舗数を増やす予定である。また競合他社のIKEAと対抗すべく最大規模の店舗もオープンする予定だ。
サントリーの市場進出事例
サントリーの飲料品は、フィリピンで長年にわたり親しまれている。同社の製品は一部の消費者層に向けたプレミアム製品と位置づけられ、店舗やオンラインなどで購入できる。
同社は健康食品の需要拡大を見込み、ブランズエッセンスオブチキン(以下「BEC」と称する)を発売した。現在はスーパーマーケットやドラッグストア、ECサイトなどで販売している。
BECを現地で広く流通させるため、サントリーはGSPDIとパートナーシップを結んだ。この提携により、現地の詳しい知識や流通手段を獲得でき、消費者のニーズに適切な対応ができる。今後も同社は現地の消費者に寄り添った事業を展開していく方針だ。
フィリピン市場の魅力と成功するための要素
フィリピン市場は今後大きな成長が期待できる。政府は外国投資を促しており、対象となる企業ならば税制面での優遇措置を受けられる。また都市化や中流階級層の増加、消費者ニーズの変化も見逃せない要素だ。
日本製品は、拡大するパーソナルケア市場や電子機器市場との相性が良い。また高度なスキルを持つ英語話者の人材が豊富である点も、経済発展の重要な要素だと言えるだろう。
フィリピンでは日本食の人気が高まっている。外食が急速に普及するに伴い日本食市場はさらに成長する見込みだ。本格的な味を求める消費者は増えており、日本企業にとってチャンスである。
市場で成功するためには頼れる現地パートナーとの提携が重要だ。彼らは商機や輸出の相談から事業拡大の支援まで、さまざまな場面で力を貸してくれるだろう。一方でオンライン販売も資金を節約しながら市場参入できる有効な手段だ。
フィリピン市場で成功する秘訣は現地パートナーとの提携やデジタル技術の活用にある。ただし、最も重視すべき点は現地消費者のニーズを事業に反映させることだ。政府の優遇措置や日本製品の強みを活かせば、商機を掴める可能性は大いにあるだろう。