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VIETNAM

(2)ベトナムの小売業|2025年2月18日開催ウェビナー

ベトナムは海外進出先として人気が高い。中流階級層の増加や高度な経済成長に加え、ENTの廃止により海外企業が市場参入しやすくなった点も魅力的だ。一方で考慮すべき課題もある。ベトナム小売市場の実態は、一体どのようなものか。

急成長するベトナム小売業界と販売形態

ベトナムの小売業界は急成長している。総GDPの約6割を占め、今年には3090億ドルに達すると予測される。このうち7〜8割は家庭消費だ。

販売形態は多岐に渡る。最も一般的な形態は昔ながらの商店や露店などで、全体収益の約55〜75パーセントを占める。ハイパーマーケットなどの商業施設は約15パーセントだが、急速な成長を遂げている。ECサイトも普及が進み、特にオンラインマーケットプレイスの利用が多いようだ。

消費者行動パターンと技術革新による変革

消費者行動パターンの変化や技術革新により、市場に大きな変革が起こっている。都市化や働く女性が増加した影響で加工食品などが人気を集めている。コンビニエンスストアの普及や中流階級層の増加により、飲料など日用品の需要も増加した。

消費者の健康意識向上により、オーガニック食品や予防医療などが注目を集めている。また持続可能性への関心に高まっており、特に若い世代の間では製品を選ぶ基準の一つとなっているようだ。

さらなる事業拡大を目指すグローバル企業

好景気に沸くベトナム市場では、既に進出したグローバル企業も更なる事業拡大を目指している。タイの大企業セントラルリテールもその一つだ。日本でも有名なロッテは、商業施設や住宅プロジェクトへの多額投資など戦略的な取り組みを続ける。

また、イオンはベトナムを日本に次ぐ重要な市場とし、全国展開を進めている。消費者支出が増加する地方都市にも積極的に進出して、売上拡大を目指す。

考慮すべき課題

市場参入には大きな可能性がある一方、考慮すべき課題もある。ベトナム小売市場は国内外問わずライバルが多く競争が激しい。インフラ整備も行き届いておらず、遠方向けのスムーズな配送が困難だ。また、法律や規制の遵守はリソースや知識が足りない小規模な業者にとって対応が難しい場合がある。

ENT廃止による緩和

今年、ENTが廃止されたことで、海外企業はベトナム小売市場に参入しやすくなった。現在は日本を含むCPTPP加盟国のみが廃止の対象だ。進出を検討する日本企業にとっては追い風だと言えるだろう。

しかし将来、加盟国以外のENTも廃止された際には、ライバルが増えるという点には留意しておきたい。

多様化する消費者ニーズ

人口動態の変化やデジタル技術の進歩により、消費者のニーズはますます多様化している。ベトナム市場で成功を収めるためには、国内の事情や人々の生活に寄り添った戦略を練ることが必須だ。

例えば、同国では核家族化が進んでおり、裕福な高齢者の増加が医療や介護付き住宅の需要に繋がる可能性がある。また、女性の経済力向上やデジタル技術の普及による生活の変化は、新たなビジネスや都市部以外の消費者の需要増に繋がるだろう。

海外ブランドと現地ブランド

ベトナムのFMCG業界には既に国内外から多くの企業が参入しており、競争が激しい。しかし海外ブランドの売上は概ね好調である。評判の良さと広範な流通ネットワークが強みだ。

一方で現地企業も高い支持を得ている。彼らは消費者の嗜好を熟知した上で低価格な製品提供を実現しており、市場のシェア率で優勢を保っている。

ベトナムでは生活様式の変化やデジタル技術の進歩により、ニーズが多様化している。また市場参入しやすくなった反面、競争も激化が予想される。市場で成功するためには、人々の生活や嗜好を深く理解した上で戦略を練ることが重要だろう。